(Iriomote Island, Okinawa. 2011.10. )
2011.10.06 (Thu) travelogue #60 "Keep walking into the fog "
今日、またひとつ年を重ねました。
いつもと同じように、とりわけ何をするというわけでもなく、何かがあるというわけでもなく、ただ静かで穏やかな朝。目の前で朝食を食べている妻と娘の姿をただそっと見ている、そんな朝。昨日は一日雨で、予定していた撮影も順延。しかし今日はさわやかな秋晴れになりました。それが、なんだかとても嬉しい。今年はとりわけ、そんな何気ないことが有り難く、嬉しく、愛しく感じるのが、どうしてだかはわかっているけれど、やっぱり不思議な感じもします。
取り返しのつかない大きな出来事があり、取り返しのつかない負債を娘たち以降のこれからの世代に残してしまいました。「一億総懺悔」のような言葉に絡みとられるつもりなど更々ないけれど、立ち止まって、そしてゆっくりと自分の足で歩きながら、これからのことを考える時であるとは思っています。もう一度、自分の中の「標準時」をセットしなおす、そんな一日だなと感じています。手に負えない大きなことを考えざるを得ないけれど、それでも、だからこそ、身近なことをちゃんと考える。気持ちは高ぶりながらも、それでも穏やかに、丁寧に暮らしていく。そんな風に歩いていきたいなと思います。
お祝いメッセージを頂いた皆様、ありがとうございました。
心より感謝いたします。
また会いましょう!
PS
今日電車の中で読んでいた本から。Keep walking into the fog!!
『インスピレーションとは、それが実際に何であれ、不断の「わたしは知らない」から生まれてくる。(中略)さまざまな残忍な悪党も、独裁者も、狂信者も、あるいは大声でがなりたてる退屈でいい加減なスローガンの助けを借りて権力を得ようと闘う煽動家でさえも、やはり自分の仕事を愛し、熱心に独創性を発揮しながら仕事を遂行しているではないか、と。それはたしかにそうです、ただ、彼らは「知っている」のです。彼らは「知っている」から、自分の「知っている」ことだけで永遠に満ち足りてしまう。(中略)だからこそ、「わたしは知らない」という、この小さな言葉をわたしはそれほど大事なものだと考えています。それは、小さなものですが、強力な翼を持っています。』
(ヴィスワヴァ・シンボルスカ『終わりと始まり』)
(Linz, Austria. 2011.09. )