少し前に、ロンドン在住の写真家、ケヴィン・ウエステンバーグから彼のポートフォリオが届いた。その前に届いた手紙には、「COLDPLAYを東京で撮影するんだ。あと幾つかの日本人のミュージシャン達の撮影もする。」と書いてあった。
ケヴィンはずっとCOLDPLAYのアルバムジャケットの写真を撮っていて、彼らには他のアーティスト以上に思い入れがあるといっていた。
COLDPLAYの新譜『X&Y』をようやく買った。
3枚目のオリジナルアルバム。はっきりいって相当に凄い出来だと思う。
過去2作もどれも好きだけれど、これはダントツに1番だ。
特にロックバンドの場合、1作目が一番いいってことが多々あるし、それは初期衝動というロックの本質を勢いのまま吹き込んだのが1作目で、その後、そんな本能的な部分から、「戦略」というロックミュージシャンとしては余計な部分に頭を捻らすことが多くなるためだと思う。
しかし、COLDPLAYの場合は、アルバムを重ねるごとに完成度だけでなく、そした歌としての本能的な強さまでが増している気がする。それは相当にレアなことだ。
それは、今では完全に世界的な超ビックバンドになってしまった彼らが、その名声に関係なくあくまでも「歌」そのものに、「歌」づくりの完成度のためだけに徹底しているからなんだと思う。
これだけ有名になっても、全く浮ついたところや見え透いた戦略などないのだ。
だから揺さぶられるし、音楽として信頼できる。
今では彼らはU2なんかと比較されるが、
僕は、やはり彼らの歌を聞くと、ECHO&BUNNYMENを思い出す。
精神的にも、またオリジナリティという意味でも、U2はECHO&BUNNYMENに憧れて、彼らのようになりたくって、でも、なれなかったバンド。(違う意味で素晴らしいバンドであるのだけれど)
COLDPLAYはその意味でU2以上の音楽を今創っている気がする。
これからipodにCOLDPLAYの新譜を詰めて、海まで散歩してきます。
2005.06.18 (Sat) 風にのる
登川誠仁、知名定男、嘉手苅林昌の唄を聴きながら、『アクロス』を都内某所に提出。
沖縄の唄を聴いていると、アーティフィシャルな街、ヒトだらけの都会でも歩ける。
ポートフォリオの最後にこんな言葉を付けた。
『アクロス(ACROSS)』
毎日の暮らしを相対化し、必要なもの、要らないものをはっきりとさせるために、
この国の一番遠くへ出掛けた。
旅の過程で、目の前を横切るひと、いきもの、風景、モノと出会い、対話し、
感謝し、自分自身にとっての糧として受け入れていくために、
カメラがあって本当に良かった。
次は北を目指したい。
撮影場所:与那国島、波照間島、石垣島、竹富島、黒島、久高島、沖縄本島
撮影日時:2002年4月~2004年10月
2005年6月 鷲尾和彦
それにしても、沖縄の、あの風のような唄はいったい何なのだ。
あの唄のような写真が撮れたらどんなに素晴らしいだろう。
風に乗って遠くまで飛んでいくような写真が撮りたい。
2005.06.15 (Wed) 『アクロス』、完成。
(黒島 2004)
なんとかプリント約100枚を終えた。
モノクロームとカラー、ちょうど半分ずつ。
2001年から数年間通った沖縄の写真。
最初はカラーフィルムで撮り始めた。
しかし、2回目からは逆にモノクロームで撮りだした。
沖縄の風景にある、あの強烈な色に惑わされずに、そこに存在するものを
掴まえようと考えた、僕なりの挑戦だった。
モノクロームで撮り始め、沖縄という場所の中にあるものに触れることが出来た感触を持ちえた時に、また再びカラーフィルムでも撮ることにした。
そんな風に、あの強い土地に対峙する術を自分なりに考えながら、撮り続けた結果、
最後に写真を選ぶと、カラーとモノクロームのプリント両方が等分に残ったというわけだ。
(あるいは、単に優柔不断なのかもしれない。)
沖縄の写真、といっても沖縄をルポすることが目的ではない。
それは沖縄に住んで暮らす人にしか撮ることが出来ないだろう。
沖縄に限らず、長い歴史の上に堆積して出来上がった風景など、僕のような者が100年かけても写しだせるわけなどない。
沖縄という土地は魅力的だ。正直、大好きだ。今住んでいる自分の町の次に好きな場所だ。出来ればこれからももっともっと訪れたいと思う。何年か通ううちに向こうに友人も出来た。
しかし、だからといって、沖縄賛歌を唄っても仕方がない。
僕が沖縄賛歌を唄わずとも、沖縄は既にそこにあり、僕の人生に関係なく、多くの喜びや悲しみ、多くの魅力を表現しているのだ。
それでも何故撮るのか、何故そこに行くのか。
僕の場合、沖縄を訪れたのは、自分が住む国のもっとも辺境の土地に身をおくことで、自分の日常の暮らしを相対化し、改めて自分の糧になるものが何なのか、そのヒントを得られるのではないか、と考えたからに過ぎない。
あくまでも一人の旅人として、自分が住む国を巡り、その中で出会う人、もの、生物、風景、全てと正面から対峙し、見詰め、そして、受け入れていくために、カメラという道具を用いているだけなのだ。
それが、僕にとって「写真を撮る」ということだ。
そして、それは他の対象を撮るときにも共通している。
だから、決して自分のことや自分の作品を「アート」だ、などとは思わないし、思いたくもない。
「アート」なんて、あの沖縄の強烈な光と色、生の前では、瞬く間に燃えて灰になってしまうだろう。
(写真を撮っているというだけで、「アーティストなんですね」なんていわれると悲しくなってしまう。時々いるんだ、そういう人。そんな人は「アート」といいつつ、「アート」の「ア」の字も分からず、もしくは分かろうともせず、平気で無神経にそういうことを言っているのだと思う。そしてまたこのように「アート」と言う言葉が持つイメージに振り回されているように、そのような人は多くの言葉が持つ「意味」に近づくことも出来ずに、「イメージ」だけに振り回されているのだろう。)
僕が沖縄で撮影した写真はあまりにも真正面から撮った、ノーギミックな写真ばかりだ。
それは先に書いたように、最初から意識していたことだった。
真正面から対象に対峙し撮ることが出来れば、次はよりフットワークを軽くし、もっと自由に対象と関わりを持ちながら写真を撮ることが出来る、と思う。
どこかで落とし前を付けておかなければならないことなのだ。それが生真面目すぎる発想だとしても、僕はそれで良いと思っている。
この数年間で撮り貯めた写真を一旦これでまとめることで、次のステップに進めそうな気がしている。
そして、これらの写真は、これからの人生で僕が写真を撮り続ける上で、いつでも立ち戻ることが出来る、原点のようなものになっていく気がする。
その意味で、僕にとってはとても意味のあるものなのだ。
タイトルに「完成」とあるけど、勿論完成などするわけがない。とりあえずの一区切り。
数年後見ると、「何が完成だ、全然まだまだだな」と思っても、それはそれでよし。
タイトルは『アクロス(ACROSS)』とした。
通り過ぎるものを全て受け入れよう。そのままストレートな意味で名づけた。
8月末に行う次の写真展の会場にもこのポートフォリオは置いておこうと思う。
2005.06.14 (Tue) 音楽はやっぱり欠かせない
この数年間かけて撮り貯めた沖縄の写真を完成したばかりの暗室でプリントしている。
大体夕方から明け方まで、およそ12時間くらいは暗室に入りっぱなし、しかも殆ど立ちっぱなし。薄暗いレッドライトの下、ずっと集中しているので、さすがに終ってベッドに横になるときにはヘトヘトということになる。
そんな中で、iPodが相当に活躍してくれている。
殆どずっとシャッフルしっぱなし。
ジョギングしている時にヘッドフォンで音楽を聴くと走る距離が自然に伸びるのだけど、まさにそんな感じで、時々踊りながら、歌いながら、身体を動かしたりして集中力と持続力を維持している。(それは相当におかしな風景だな。)
というわけで、週末も昼間はうちに泊まりに来た知人と共に、昼間、葉山の海岸にビール片手に出掛けた以外は暗室に入っていた。
ちなみに、聴いていたのはこんな曲。
- Devil In Me / 22-20s
- I Wanna Thank Ya featuring Snoop dogg / Angie Stone
- Surripere / Autechre
- Desert Skies / Beachwood Sparks
- With My Two Hands / Ben Harper
- Diamonds On The Inside / Ben Harper
- Punky Reggae Party / Bob Marley & The Wailers
- Don't Panic / Coldplay
- Shiver / Coldplay
- Just Like Heaven / Dinosaur Jr
- ROAD TO NOWHERE / DJ KRUSH
- You've Got A Friend / Donny Hathaway
- Sea Song / Doves
- Speed Trials / Elliott Smith
- Water No Get Enemy / Fela Kuti
- Victim Of Life / Femi Luti
- Stepping Stones / G. Love & Special Sauce
- Get Out Of The Ghetto Blues / Gil Scott-Heron
- Times Like These / Jack Johnson
- Mojo Pin / Jeff Buckley
- Every Ghetto, Every City / Lauryn Hill
- All Down The Line / The Rolling Stones
- Born To Boogie / T.Rex
- Seven Nation Army / The White Stripes
- サヨナラCOLOR feat.忌野清志郎 / ハナレグミ
- 恋語れー / 嘉手苅林昌
- 十九の春 / 登川誠仁 & 知名定男
とても分かりやすい好みだな、と我ながら思いました。
2005.06.06 (Mon) 暗室、一応完成。
暗室、ようやく出来ました。
まだまだ必要なものもあるのだけど、とりあえず稼動できる状態になりました。
2005.06.04 (Sat) iPod shuffle買ってしまいました
毎朝、音楽を詰めて出掛ける。 iPod shuffleは、「音楽弁当」なのだ。
ちなみに今入っているのはこんな感じ。
・Bob Marley & The Wailers [Exodus][Rastaman Vibration]
・The soundtrackfrom the surf movie by Thoman Campbell [Sprout]
・Jack Johnson [On and On][In Between Dreams]
・Gilles Peterson [In Africa]
・ハナレグミ [帰ってから歌いたくなってもいいようにと思ったのだ]
・ハナレグミ [サヨナラColor 映画のためのうたと音楽]
2005.06.02 (Thu) Jack Johnson & G.Love@横浜BLITZ
なんだかこの1週間ほどの間、ライブ強化ウィークのようになってしまっていたけれど、
やはり最後はこの人たち、Jack JohnsonとG.LOVEのライブです。
6月1日、横浜ブリッツで彼らのライブを観てきました。
なんだか凄いお客さんの入りで、彼らの大人気ぶりを改めて認識。
G.LOVEの1stを最初に聞いたのはもう10年以上は前なんじゃないかと思うんだけど、
アルバムの1曲目『The Things That I Used To Do』をよく恵比寿のMILKなんかでDJするときにはよくかけていたことを思いだし、妙に懐かしかった。
ステージを見るのは今回が初めてだったけど、相変わらずのへなちょこBLUESがかなり良かったし、楽しかった。踊りっぱなしだった。
Jackの方は、曲も即興も相変わらずで、毎度同じなんだけど、やっぱりそれでいいし、そのことがなんだかとても嬉しかった。
3枚目の最新アルバムの曲では、さらにソングライティングの腕が上がっているのに驚いたんだけど、ライブで聴くと更にそのことが実感できた。
ギター1本、ピアノ1台でいいメロディと歌詞を書く、そんなとてもベーシックな部分がしっかりしているから、どんなシチュエーションで聞いても「感じる」んだと思う。
2年前の朝霧Jamの時、バックステージで少し緊張して出番前のウォーミングアップをしていた彼のことを思い出すと、なんだか昨夜のステージでは、貫禄と余裕が随分出てきていて相当に頼もしいアーティストになっている。その分、聴いているこちらに彼の歌がすーっと染み込んできて心地よかった。
プレイするだけじゃなく、「届ける」腕も上がっているし、昨夜のJackはそのことをとても丁寧にやっていた気がした。
アンコールでやった数曲、特に、G.LOVEと演った「Stepping Stone」は昨夜のベストかな。
また毎年アルバムを出して、毎年日本に来て欲しいなと思う。
変わらずにいつも同じでいいから。やっぱり、そういうのが嬉しいから。
"UNDER THE MOONSHINE" ~ Dialogue with Jack Johnson ~"(2004.08.)