2008.02.23 (Sat)  Neighborhood 2008.02.


(Zushi, Kanagawa. 2008.02.16.)



2008.02.16 (Sat)  再会

昨夜のEmon Photo Galleryでのパーティーでは本当に多くの友人に来て頂いた。久々の嬉しい再会の数々。逞しくなったなあ、ますます奇麗になったね、相変わらずいい笑顔だよなあ、などなど。一枚の写真をきっかけにこうした出会い、再会が出来ることは本当に嬉しいし幸運だと思う。普段は離れていても大丈夫、いい顔になって行く人たちの姿は一瞬で瞼に焼き付いて思い起こすたびに僕を励ましてくれる。こういう夜は写真をやっていて本当に良かったと思える。ありがとう。最近なんだか「ありがとう」ばかりを言っている気がするけれど、ほんとうにありがとう。

PS
昨夜、久々に再会したサカイ君から「鷲尾さん、テオ(映画監督テオ・アンゲロプロスのこと、僕もサカイ君も一番好きな映画監督)が新作撮影開始したらしいっすよ」と聞いて、ドキドキする。「クーデルカみたいに鷲尾さんがテオの映画撮影現場をドキュメントして欲しいなあ」と嬉しいことを言ってくれるものだから、またドキドキする。(ちなみにクーデルカとはもちろん、写真家ヨゼフ・クーデルカのこと。彼はテオ・アンゲロプロスの「ユリシーズの瞳」の製作現場をドキュメントしている。) サカイ君、いいこと言ってくれるなあ、また夢がひとつ増えたよ。
お返しに昨日話題になった写真集の表紙をアップしておきます。美しさと怖れと。前へと向かう意思と世界を受け入れる品格と。一枚の写真とシンプルな言葉だけで誰もがノックアウトされる。遠くと近くを繋ぐコトバ、これは「詩」だ。テオやクーデルカのようだ。



2008.02.13 (Wed)  ありがとう

無事Pict Galleryでの写真展が終了いたしました。ギャラリースタッフの皆さんをはじめ、写真展までお越し頂きました皆様、心より感謝いたします。ありがとうございました。ギャラリーオーナーの庄野さんにお伺いすると、なかなかの数のお客さんに足をお運び頂いていたとのこと。最終日しかギャラリーに居られなかったこと本当に残念でした。感謝をお伝えすると同時に、心からお詫びいたします。
クロージング・パーティーではパーティーに集まって頂いた方々のために、スライドで作品をうつしながら写真についてお話しました。即興のスライドショー。しかし後で何人もの方から非常に嬉しい反応を頂きました。スライドショーが終わった後は、むしろそれ以上にいろいろな方々との会話が弾みました。僕自身も得ることがとても多かったですし、とても親密でとても貴重な時間を過ごす事が出来ました。パーティーにお越し頂いた皆さん、ありがとうございました。
ギャラリーで作品を見て頂く際には、観る人の全く自由に楽しんでいただければと思うのですが、鷲尾の話を聞きたいという方がいらっしゃったら、いつでも、たとえどんな場所、機会であっても、喜んでお話したいと思っています。ロックバンドはアルバムを出すと、ツアーをしますよね。写真家もツアーをしたらいいと僕は本気が思っています。ロックバンドよりも機材も人手もかからない。PCとプロジェクターだけあったら一人でも何処でも行ける。
作品を展示して自由に味わってくださいというのも勿論大切。でも作品と鑑賞者の間は、やっぱりそれだけではないのではないか、とも思うのです。現にこれだけデジカメやケータイなど、写真撮影そのものが簡単に誰でもできるような時代になっているのに、写真集を買う、あるいは作品を求める人は少ない。それはプロモーションという作戦以前に、やっぱり作品と鑑賞者との関係性の問題があると思うのです。作品を届けるためには、まだまだ出来ることはあるのではないか、今回の写真展を通しまたひとつ新しいテーマも頂戴したと思います。感謝です。
芳名帳には「もっと大阪で写真展やってください」というメッセージもありました。勿論です。応えられるように、僕の写真を続けて行きたいと思います。ありがとう。

PS
写真展が終わった夜は、大阪の大先輩、谷口さんに、大阪一(ということは世界一)旨いお好み焼きに連れて行ってもらいました。勿論、最高でした。まさに「店を出たら、万歳三唱!」でした。大阪在住の写真家、桑島薫さんとも久々の再会で嬉しかった。川崎さん、ムネヒロ君も忙しい仕事の合間を抜けて駆けつけてくれました。そして結局最後は夜更けまで写真の話。みんな写真が好きなのだ。ありがとう。感謝しています。また近々、会いましょう。



2008.02.04 (Mon)  River


(zushi, Kanagawa, 2008.01.)



2008.02.02 (Sat)  星野道夫写真展「星のような物語」

昨夜は市川市文化会館で開催中の、星野道夫さんの写真展『星のような物語』に行ってきました。星野さんの奥さんである星野直子さんが直接ガイドをつとめてくださり、作品にまつわる様々なエピソードや星野さんのことをお話していただける「星野直子さんと見る写真展」というイベントに参加するためでした。
写真展で、写真集でと、何度も何度も繰り返し見てきた星野さんの写真。しかし多くの撮影にご同行されパートナーとしてともに星野さんと同じ風景を見つめ続けて来た直子さんの肉声とともにもう一度見ることで、目の前の写真や風景は改めて輝きを、響きを増していきました。1枚の写真の背景に(被写体と撮影者双方における)豊かな物語があれば、その写真はいつまでも何度でも生命力を強く放ち続けていく。そんなことをあらためて感じた夜でした。
「遠く」と「近く」とを結びつけてくれる。その「つながり」の強さ、想像力の逞しさが星野さんの仕事のもっとも素晴らしいところだと思っています。そして、直子さんの言葉が重なることでその距離がさらに親密になっていきました。至福の一夜でした。

「一番好きな写真家は誰ですか?」と時々聞かれることがあります。一人挙げろというのはとても酷で、僕は自分が写真を撮っているくせに、自分には出来ない仕事をしている写真家の仕事をみるとどれも素直にいいなと思ってしまうところがある。しかし、それでも一人だけ挙げるとすれば、迷うことなく星野道夫さんです。それは何故かと理由を述べようとすると、とても長くなる気がするし、正直僕が今十分に語りきれるほど星野さんと彼の仕事は小さくない。それは目の前にそびえている一本の大樹であり、僕はいまだにその樹が広げた大きな枝振りを下から見上げて、いつかどうにかしてその樹の上に登って同じ風景を眺めてみたいと思っている子供のようです。

それでも敢えていくつか昨夜のことを思い起こしながら、星野さんに惹かれる理由を挙げてみると、それは先にも述べたましたが、その想像力の逞しさ、つまり「遠く」と「近く」とを結びつける「つながり」を生む力にあると思います。ネイチャーフォト、動物写真などというカテゴリーは正直全く関係ないし、そういうことではない。目の前にある世界と見る側(写真家、そしてオーディエンス)との間の「つながり」こそが大切なのであり、その「つながり」をつくる手段としてたまたま(あるいは結果的に必然として)、写真という道具を用いた人なのだと思います。おかしな言い方かもしれませんが、星野さんは写真家であり同時に写真家ではないと思うのです。そしてそれ故に、彼の写真や言葉は、胸を撃つし、信頼できる。そして決して古びることはない。ちょうど写真展の入り口にあるメッセージの中に「写真家になるつもりはなかった」という星野さんの言葉がありました。そうだと思う。だから、僕はこの人の写真が好きなのだと思います。

昨夜の写真展の会場には本当に幅広い年齢層の方が来られていました。小さな子供達が静かにじっと立って直子さんのお話を聞いている。会場の外にはそんな子供達が書いた「星野道夫さんに伝えたいメッセージ」が貼り出されていました。身近な場所から初めて、いつか世界全部が親しい場所(=Neighborhood)と感じられる時まで、僕も続けていきたいと思いました。素晴らしい一夜を、ありがとうございました。

最後の会場にあった星野さんの文章を転載させて頂きます。星野さん自身は声高に環境問題について言及される人ではなかった。でもこの言葉は他のどんな提言よりも地球温暖化や気候変動の問題に向かい合うためのもっとも核心的なメッセージを言い表していると思います。僕のこのウェブサイトの【dialogue】にも載せた環境活動家セヴァン・スズキのメッセージも全く同じことを言っていると思います。そして同時にこの言葉は、星野さんにとっての写真、写真家・星野道夫のスタンスをもとてもよく表しています。

「いつか、ある人にこんなことを聞かれたことがあるんだ。
 たとえば、こんな星空や泣けてくるような
 夕陽を一人で見ていたとするだろ。もしも愛する人がいたら、
 その美しさやその時の気持ちをどんなふうに伝えるかって?
 写真を撮るか、もし絵がうまかったらキャンパスに描いて見せるか、
 いややっぱり言葉で伝えたらいいのかな。
 その人はこう言ったんだ。自分が変わってゆくことだって......
 その夕陽を見て、感動して、自分が変わってゆくことだと思うって。」


*『いちかわ星野道夫展』
市川市は星野さんのご出身地。本写真展を含め合計4カ所で様々なイベントや展覧会が行われる『いちかわ星野道夫展』が現在開催されています。



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