2年前の6月、レコーディングに向かう途中、「月が奇麗だから」とラジカセと酒をもって、 ミシシッピ川を泳ぎ入ったまま、彼は帰らぬ人となってしまった。 月明かりの下、いっしょにNightSwimingを楽しんでいた友人が近くを通ったボートに 気を取られ、目を離したわずかな瞬間の出来事だった。
先月、5/31のMILK、皆が一番激しく体を動かしている時に、 あえて僕はターンテーブルを止め、全部の音を切り、 「きっと皆は知らないし、踊れないかも知れないけど」と珍しくマイクを通して話してから、 JEFFの「ETERNAL LIFE」をPLAYした。 まさに「幻」となった、95年1月新宿リキッドルールのライブでも、この曲は一番激しく、 むしろ逆説的なまでに「刹那」であり、尖ったリフを叩きつけてくる彼の姿は既にこの世 の光景を超え、圧倒的に「歌」を飛び散らせていた。
U2のBonoは、彼の死に対して「A tiny pure drop in the noize sea」といった。 僕の生まれた67年はマジックサマーと呼ばれBeatlesの「サージェントペパーズ」や Doorsの1stなんかが出た年だった。そんな時代には、やばいほど凄いカリスマ達が (モリソンも、レノンも、Jeffの父であるTimBuckleyも)いた。 20年早く生れてたら面白かっただろうなあ、なんて子供っぽいことばかり考えていた。
でも、Jeff Buckleyっていうアーティストが、同世代として存在することを知ったときに、 そんな子供っぽい発想なんてなくなった。むしろ、今で良かったとそう思った。 彼がいなくなってから、2年。 もしかして、ひたすらに彼のいなくなった風景を埋めて くれる音楽ばっかり探している気もしている。 Elliott Smith。少し救われた気がした。 Smashing Pumpkins。Jeffの後の一番のヘビーリピート。でも僕は相変わらず恋人から 届いたエアメールのように、そっと彼のレコードを引っ張り出してきては、 何度も何度も繰り返して聴きつづけるしかないんだろう。
僕は依然として、彼のいない喪失感の中にいる。