友人の中根“ちーなか”大輔が、念願のギャラリーを昨年末にオープンした。オーナーは彼と彼の大学以来の親友の二人。彼が始めたギャラリーはとてもユニークなスタイルのものだ。BOXギャラリーといって、小さなボックス(いくつか大きさの種類があるが、およそ35×35センチメートルの白い箱)が幾つも並べられていて、その箱(BOX)単位で様々な人に貸し出そうというものだ。
中根さんは実は金融関連の企業に勤めた後、「個人の社会化を支援することを生涯の仕事にしたい」と決め、自分自身の会社を立ち上げた。あくまでも個人の自己表現やスモールビジネスをサポートしていく目的で、例えば彼らのインターネットのWebサイト運営やコンサルティングなどを始めていた。そしてこの度、長年の夢でもあり、また個人の表現の場を提供していくという目的を実現するために、自身の活動の拠点ともなるBOXギャラリーをオープンさせたのだ。
もちろんまだまだこのギャラリーはスタートしたばかり、いよいよこれから試行錯誤、挑戦、冒険が始まっていく。僕自身、彼のその徹底した、そして非常にクリアな夢、目的意識にいつも励まされ続けている。実際、僕の写真展などという全く金にもならない話にまで徹底して付き合ってもらいサポートしてもらっている。一昨年の写真展も彼のサポートがなければ実現することは出来なかった。僕もギャラリー運営のためのアイデア出しの面から出来る限り力になっていきたいと思っている。
2003.01.03 (Fri) 淡路島
親父の古いトヨタ車を借りて友有子と二人で淡路島までドライブに出掛けた。
生憎の雨。僕らは巨大な明石大橋を利用せずに、明石からフェリーに乗ることを選んだ。明石海峡を越えていく僅かな時間、霧が立ち込めたように煙る空と海の狭間では風は強く荒んでいたが、僕らはデッキや通路に出てその風景を楽しんだ。眩い光が雨雲でシェードされていて海は霞みながらもいつもよりも遠くまで静かに続いていた。それにその色は僕らが好きな青だった。淡路島についても雨は激しく、正月の間稼動していない貨物船のドッグに忍び込んだり、有名な建築家が設計したちょっと成金主義な寺を訪ねたり、当てずっぽうに山道や海岸線沿いをクルマを走らせたりして過した。
もちろん途中途中クルマを泊めては雨に濡れながら、傘を抱えながら僕は写真を撮っていたのだが、その殆どは雨空と傘を抱えていた為にすっかりぶれてしまっていた。僕自身とカメラもすっかり濡れてしまったのはいうまでもない。父親から借りた古いトヨタ車はすっかり窓ガラスも水はけが悪くなっていて、窓ガラスは終始曇りっぱなしだった。極端に悪い視界の中、窓ガラスを拭きながら身を屈めながら僕は運転しなくてはならなかったのだが、そんな空間が何故かとても二人には親密で嬉しかった。
翌日はすっかり晴れ渡り東京では信じられないくらい、まるで夏の空のように高い白雲が立ち上がっていた。僕らの中では、なんだかずっとあの雨に濡れた景色が残りつづけていた。それはたった半日のドライブだったのに、シンプルだけど鮮明な色と感触を持った風景の印象だった。それは雨が描いてくれたインティメットな風景描写だった。
「今日みたいないい天気に出掛けていれば良かったのにね」そう母が僕らに言った。でも、「なんだかあの雨の中のドライブだったから良かったかもね」と僕らは顔を見合わせてた。