2009.11.29 (Sun)  スライドショー&トークイベント@世田谷233


(Photo by Naoh, 2009.11.28.)

昨夜は世田谷233で、『One Day, One Film展』のクロージングパーティー。『極東ホテル』出版記念のスライドショー&トークもやらせて頂きました。面白かったなあ、本当に。世田谷233を主宰する盟友・中根大輔とのトークなので、これまでのどんなトークイベントよりも中身は濃く、そして核心に触れる内容であったと思います。僕自身、話した内容を記録しておきたかったと思う程の濃い内容でした。お越し頂いた皆さんに心より感謝いたします。
その後は『One Day, One Film展』に参加した一人一人がスライドショーを上映しながら自分自身の作品について語るという内容でしたが、これもとても面白かった。以前、ハナレグミの永積君がライブの会場で「みんな、音楽やればいいのに〜!」って叫んでいたけど、僕は皆の写真とお話をききながら、心の中で、「そうそう、みんな写真やればいいのに〜!」って思わず叫んでしまいました。誰もが毎日のそれぞれの暮らしの中で、写真を撮りながら、そして自分が出会った様々な物事について思いを馳せる時間が持てれば、きっと世界はちょっとだけ素敵になるような気がします。素敵な夜を本当に有り難うございました。またお会いしましょう!



2009.11.23 (Mon)  『ある日(One Day)』


昨夜から降り続いていた秋雨が上がった静かな午後、僕は近くの海までいつもより少し長い散歩に出掛けた。秋模様に衣替えした風景の中、やがてくる春に備え、草花は柔らかい土の中でその小さな生命の息吹を温めようとしている。冬がそこまで来ているのだ。

海を見下ろす丘の上までやってきた時、草むらの中で、たった一輪だけ、湿り気を含んだ冷たい海風に吹かれながら、その小さな花弁を懸命に曇り空に向かって広げている赤い花を見つけた。
その時、僕はこの小さな赤い花に出会うために今日はここまでやってきたんだなと思った。
悠久の時の流れと、僕という小さな存在が交差する確かな実感。
そして、今日というある日が、特別な一日へと変わっていった。

一日は短い。

ひとはその束の間にさえ、それぞれの意味を見出そうとする。
それは綿々と続く自然の大河の中で、あまりにも一人のひとの人生が短すぎるからではないだろうか。しかし、その短さを受けとめるとき、そこにはじめてささやかな希望が芽生えるような気がする。
あの小さな赤い花は、そんな思いを呼び起こすに十分すぎるほど逞しくて大きな存在だった。

陽は西の海の向こうに傾き、ゆっくりと沈もうとしている。
あの陽が沈む彼方の町では、また新しい一日がはじまろうとしている。

(『One Day, One Film』展によせて 2009.11.)


PS
『One Day, One Film展』クロージングパーティー&トークイベントがあります。
写真集『極東ホテル』の先行予約を行います。
2009年11月28日(土) 夕方6時から。世田谷233にて。
詳しくは、こちらまで。→ http://exhibit2009.233photographers.net/



2009.11.16 (Mon)  Making of Photobook"Hotel Fareast"


(Color proofreading, 2009.11.14.)



2009.11.07 (Sat)  travelogue #28 "Catch The Sun"


("Catch The Sun", 2009.11. )



2009.11.03 (Tue)  泡瀬干潟 (Awase tidal flat)

1年半ぶりに、沖縄の泡瀬干潟を訪れた。
「いいタイミングで来たね。ちょうど明日は大潮の日。干潮は12時ごろだから、11時すぎに着くのがいいかな。」泡瀬に向かう前夜、電話口に聞く久しぶりのK子さんの声は相変わらず元気でとても気持ちいい。何も変わらないことが本当に嬉しい。
翌朝、後輩のY君と、沖縄在住のT君、途中でK子さんをピックアップして4人で泡瀬に向けて車を飛ばした。予定時間に干潟前の駐車場につくと、泡瀬干潟を守る連絡会の代表であるMさんが出迎えてくださった。「メジャーリーグを見ていただけだよ」とMさん。この1年あまり、たびたびMさんの姿はテレビを通して拝見してきた。突然の訪問にも関わらず、お忙しい中、出迎えてくださったことに心より感謝をお伝えする。

干潟の光景はこの1年余りの間に随分と様変わりしてしまっていた。
引いていく潮の先、干潟の中央を貫き作られた人工建築物(それは計画通りに進んでいけば、埋立地を東西に貫く幹線道路となる)が水平線を遮り横たわっている。その姿はまるで巨大なギロチンのようだった。そしてその冷たく不気味な建築物は、干潟の潮の流れを大きく変えてしまっていた。
昨年春、満月の月灯りの下で、焚き火をしながらみんなで楽器を奏で唄ったあの浜も、潮の流れの変化で地形が変わり、か細くすり減ってしまっていた。西側の浜ではもうアーサーが採れなくなってしまったらしい。一見すると確かにまだ干潟は残っている。しかし実際に干潟に入り、丁寧に見ていくと、確実に生態系が壊されていくことが明らかに分かる。
それでもまだこの状況でなんとかおさまっているのは、Mさんたちの10年に及ぶ活動があったからだ。それがなければ、今僕たちが歩いているこの干潟は、もうとっくの昔に埋め立てられてしまっている。工事がいったん止まったというニュースを、自宅を出る前に聞いていたので、心の中でどこかほっとした気持ちもあったのだろう。それ故に、実際にその風景を目の当たりにし、自然がいかに繊細なバランスの上で成り立っているのかということを知識ではなくリアルな体験として実感することは、とてもショックだった。

みんなで潮がひいた干潟を歩く。砂地の表面に空気穴がたくさんあいている。生物が沢山いる証拠だ。彼らが有機物と無機物との循環を生み出すことで、砂地は柔らかく、そしてその上を歩くと本当に心地よい気持になる。これが生きている干潟の姿。そろそろ冬の渡り鳥たちがこの干潟にも姿を見せ始めるころ。もしも干潟がなくなると彼らの渡りのルートが閉ざされてしまうことになる。渡り鳥は複数の移動ルートを持っているが、そのルートが少なくなると結果的に限られたルートに集中し、もしも仮にそこで鳥インフルエンザなどの病気に感染したりすると、種の存亡に大きなインパクトを与えてしまう。生き延びるために複数のルートを確保しているのだ。沖縄にあるひとつの干潟。しかしそれは多様な生物の生命が繋がりあっている地球規模の結節点なのだ。
「まだ今なら間に合うはずだよ。これからが本当に大切な時なんだよ。」 
潮が引いていく先で、干潟を散策している親子の姿を眩しそうに見つめながら、Mさんがそう言った。
「あの家族の姿。あれがこの干潟の最高の風景なんだな。このままだと、あの風景も見えなくなってしまうかもしれないからね。」
あの家族も今きっとそうなのだろう、ひとの「気持良い」という感覚でさえ、ここにいる小さな生物たちがもたらしてくれている恩恵なのだと思うと、取り囲む自然への愛おしさが込み上げてきた。

僕たちは干潟の中を歩きながら、これからのことについて話をした。いつも明るく、そしてアイデアにあふれたK子さんは次から次へと、この干潟のためにこれから出来ることのアイデアを挙げていく。僕はK子さんの熱い思いと、その軽やかさと大胆さに本当に驚かされてしまった。
反対を声高に唱えたり、環境保全の重要性や、この干潟が有する生物の豊かで貴重な多様性を説いたところで、推進派に対しては必ずしも有効ではないことは言うまでもない。
そもそも環境問題と一口で言っても、その原因も解決方法も複雑極まらないものだ。様々な要因が複雑に絡まり合い、結果的にある現実を生み出してしまう。そして何を問題と感じるかということも、また人それぞれだったりする。そうした複雑な問題にいかにして取り組むかという解決策も、まさに一筋縄ではいかない。「これをやれば大丈夫」というシンプルな解決策を声高に訴求するものほど、むしろ眉つばものだと言えるだろう。それはそこにある真の課題や複雑な原因からむしろ目を逸らさせることにすら繋がる。推進派が干潟の入り口に掲げている計画予定地を描いた看板には「人」「地球」「未来」といった魅力的な言葉が踊っている。僕達はその言葉の先にある世界を知覚するセンスをどこまで確かに持っているのだろうか。
出来ることは、やはり現場に入り、現場の中でこそ見つかっていくものかもしれない。それはとても時間も労力も掛かる。しかし現場の人間だけでは、その真剣さが故に、考え方も知らず知らずのうちに狭く硬直的になることも起こりうる。

そんな中で、K子さんのような、ポジティブで柔軟なアイデアを発想できる存在は、本当にこの干潟にとって大切な存在だ。そしてその発想は、やはり現場に常に向かい合う中でこそ生まれてくる「生きたアイデア」なのだと思う。
この泡瀬干潟に偶然にも(そして幸運にも)関わることが出来た立場として、僕たちはK子さんやMさんとの会話を続けていくことを約束した。K子さんのアイデア会議の相手になることくらいしか実際には出来ないのだけれど、それでも話しをしていくことで、K子さんやMさんたちのヒントのひとつにでもなることが出来ればと思う。内的かつ土発的な発想と、外からの視点がいいタッグを組むことが重要だと、K子さんも僕も実感として感じている。これからも、この出会いを大切にしていきたいと思う。

今年の「100万人のキャンドルナイト」のメイン写真の撮影は、冬の泡瀬干潟で行われたそうだ。寒空の下、みんな凍えながら数時間かけて、キャンドルに灯した火を撮影したそうで随分と大変だったらしい。その時、この撮影に参加した大学生から、K子さんはこんな手紙をもらったと、その手紙の内容を聞かせてくれた。
「寒い干潟の中で、ローソクに火をつけるのも、消さないでその小さな火を守るのにもとても苦労しました。でも、よく考えると、それってなんだか今の私たちの社会を象徴しているみたいですね。」


PS
「今日は風が強いし、少し寒いから、ミナミコメツキガニは顔を出さないかもしれないね」
この干潟だから会える、あの愛嬌ものの姿が見えないのは残念だなと、そろそろ干潟から上がろうとしていた矢先、K子さんが「ちょっとあの辺り見て」と、少し離れた砂地を指差した。
僕らはゆっくり近くまで近づき、その砂地の上にしゃがみこむ。すると、柔らかな砂地の中から一匹、一匹、恐る恐るという感じで、あのチャーミングな連中が姿を現した。
初めてこの干潟を訪れた、Y君も、Tさんも、その姿を見て驚いている。
この泡瀬干潟にいる希少生物のミナミコメツキガニが、僕らを出迎えてくれたので、その映像を載せておこうと思う。拙い言葉で語るよりも、こんな映像を見ることの方が、きっとこの干潟のことに思いをはせるきっかけになるかもしれない。




2009.11.02 (Mon)  travelogue #27 "Have you seen the Gustav sea ?"


("Have you seen the Gustav sea ?", 2009.11. )

There was a boy I used to be

I guess that he was cold
If she came to buy him now
How cheaply he'd be sold
But the light is gone and it is dark
What used to be the sky
Is suddenly embarrassing
To the naked eye
Can't face this memory
How long ago one gorgeous night
We let the stars go
We let the stars go
Long ago one stupid night
(from Prefab Sprout "We let the stars go")

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2009.11.01 (Sun)  "Compassion"


(Tokyo, 2009.11.01.)

『世界には2つのタイプの宗教があります。ひとつは仏教や禅といった、悟りへ向かう道をといたもの。もうひとつはただ一つの神のことを信じるというものです。しかしいずれにしても「Compassion」、思いやりや寛容、愛の重要性については共通していると言えます。例えば、親鳥が雛を愛するのは、決して宗教観からくるものではないでしょう。もっと根源的な感情のためなのです。その意味で、私は「世俗主義」を信じるものです。寛容の精神、愛、思いやりといった全世界的な、全宇宙的な、世俗的な価値を高めていくことが出来れば、宗派に拘る必要もないし、神も、そしてブッダですら必ずしも必要ではないのです。』



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