今月末から渋谷東急Bunkamuraでサバスチャン・サルガド氏の写真展『EXODUS』が開催される。そのことを先月末芝浦にある写真ギャラリーに置かれていたフライヤーで知った。その中でサルガドは「子供達にこの写真展を見てもらいたい」とのコメントを残し、小学生以下は無料でこの展覧会が見れるようにしたと記されていた。
写真に関心のある人なら一度くらい彼の名前を聞いたことはあるかもしれない。 僕は彼の名前を10年以上前に買ったある雑誌で知った。全てではないけれど、雑誌や写真集という形で彼の写真を見たこともある。 それは労働者をテーマにした写真だった。そこには写された対象への何か尊敬の念のようなものが映し出されていたことを覚えている。
僕はこの写真展の案内を見て、子供達に見てもらいたいと彼が望んでいるのなら、この写真展が開催される場所に住む自分が、この土地の子供達を集めて彼の写真を見る機会を用意してみるのはどうだろうか、と思いついた。それは僕自身がサルガド氏の写真にやはり惹きつけられているからであり、何か伝えたいことがあって写真という素材を提示する写真家がこの日本で生きる人と対話をしてみたいと思っているのであれば、そのために何か出来るのではないかと、自分が同じく写真を撮る人間であるという前に一個人として思ったからだ。 本来ならばこの写真展の主催者サイドでこういう企画は実施するものなのだろう、実際そんな企画があるのかと、早速、渋谷東急Bunkamuraに連絡してみたところ、そのような企画は誰も用意していないということが分かった。そして企画意図をBunkamura広報担当の方に話したところ、主催者として「ぜひ実現したい」とのご返答を頂いた。
今、この企画を具体的にどのような形にして実現すればいいのか、考えている。
どのような場がサルガド氏にとっても、見る立場の子供達にとっても相応しいのか考えている。 その中で色んな人からも意見を貰った。友人や家族ともこの話を毎日している。 もっともっと徹底して考えなければと思っている。 この企画を思いついたのが僕ならば、最善を実現するのも僕の責任なのだから。
2002.08.03 (Sat)
久々に隅田川へ散歩に出掛ける。いつものように船に乗り、浜離宮、日の出桟橋方面へ揺られていく。何をするというわけでもなく、夏の日、こうしてビールでも飲みながら船に揺られて行くことが心地よい。日の出桟橋を出て、お台場方面に向かう間のこと、芝浦方面のオフィスビルや、高速道路の橋に丸く囲まれた東京湾の中に放り出され、乗船客達は何故かそわそわと落ち着きを失っていく。 海の上ですっぽりと周囲から囲まれてしまったその空間は、子供の頃誰もが探した「隠れ家」のような場所として、彼らの心をどこか高揚させてしまうのかもしれない。 僕はそんな乗船客の中で、写真を撮ったりしながら、彼らと同じように少しだけ高揚している気持ちを隠し切れない。 夏の日の夕暮れ前、そういう時間が何故だか妙に気に入っている。
2002.08.01 (Thu) 清里フォトアートミュージアム
仕事場に、自宅から電話があった。清里フォトアートミュージアムの『ヤングポ ートフォリオ』の選考に選ばれた、との連絡だった。仕事場までその通知をFAXして もらうと、清里フォトミュージアム館長・細江英光氏の名前で「『インディアン・サ マー(神奈川・平塚)』を、ミュージアムのパーマネント・コレクションとして購入 します」と記されていた。
選ばれることは勿論だが、僕の写真を多くの人が見てくれる機会が増えることが何よ り嬉しかった。そして、電話口で僕喜んで騒いでいる妻に誰よりも感謝した。
9月頭に沖縄の写真を展示する話があったのだが、この結果を早速その企画してくれている友人に伝えたところ、「じゃあ、受賞祝いということで 、その写真にしませんか?」と返事があった。 今夜は偶然にも写真展の準備を手伝ってくれた親友の中根さんがうちに来て、一緒 に晩飯を食べようという日だ。彼が居てくれたので、あの写真展も実現した。今夜は 一番大切な人達と一緒に早速ささやかな祝いをすることとしよう。