2002.07.29 (Mon)  

沖縄で撮影した写真をいくつかセレクトして、『PHOTOGRAPHS』にアップしました。 これらの写真は勿論撮影したうちのほんの一部ですが、他の写真も含めて、来月8月お盆明け頃に、世田谷の松蔭神社にある小さなギャラリーで個展を行うことになりました。急に決まった話なので、今回は十分な告知が出来ないかもしれません。決まり次第、このWebでご案内できればと思っています。



2002.07.17 (Wed)  関美比古『Carnation』

  関美比古さんという写真家の写真集『Carnation』を買った。
毎日、仕事から帰ってくると、その写真集を繰り返し眺めている。 彼の名前はこの本を手にとった書店ではじめて知った。その写真集が、 昨年撮影旅行先のポーランドでバス事故に合い死去した彼を偲ぶ仲間達によって創られたものだとは、自宅に帰ってきてこの写真集を広げ、そこに記された様々な仲間の写真家や家族、友人の言葉を読んで初めて知った。
  毎晩、僕はその写真集を眺めている。 そこにどんな情景が映し出されているのか、その写真は何を撮っているものなのか、その写真が何故僕の心を掻き乱すのか。
一冊の写真集に込められた一人の写真家の生と死が、やはり濃く充満していることを痛感した、そのことも確かに大きな理由だ。しかしそんな撮影旅行中の死という悲劇が、必要以上に僕を追い立てているのでは決してない。  
  『Carnation』という写真集には、確かにそこにはソリッドな視線があった。そこには旅をする同世代の男の姿があった。 そこでは言葉には綴ることの出来ない風景が掴み取られていた。それらは、僕自身の中にある「写真」へと、強くかき立てた。 そして、その先に潜む深遠な闇と光へと誘った。僕はそれらを強く求めていることに改めて気付いた。夜毎、夜毎、その写真集をめくりながら、「写真」へと強く急き立てた。
  鉛を抱えた心は、やはり溶かせないのではないか。いや、溶かしてはいけないような気がする。



2002.07.14 (Sun)  

  Red Hot Chili Peppersの新譜を繰り返し聴いている。99年の夏に聞いた『Californiacation』はその年のベスト1だった。あのアルバムをガンガンかけながら、レンタカーでロンドンから時計回りに南へ西へと1週間旅をしたことを思い出す。
ヴォクソールの一番小さなクルマに乗って、信号もない田園風景の中を延々にドライブした。ロンドンからブライトンへ。それからソールズベリーへ、バースへ。ソールズベリーでは泊まるホテルもなく、クルマの中で朝を迎えた。あの時もジョン・フルシアンテのギターを聴いていた。
 Red Hot Chili Peppersは相変わらず素晴らしかった。
こんな風に音楽を楽しめたら素敵だろうな。ジョンのギターも相変わらず素晴らしかった。上手いとか、凄い、ではない。心のひだをざらっと撫でてくれるようなギターだ。彼は例え単音弾きでも、そこには風景やら色彩やら匂いまでを込めることが出来る稀有なアーティストだと思う。今年の夏もきっとこのアルバムを聞きつづけることになるのだろうな。今年はどの辺りを駆けてみようかな。



2002.07.13 (Sat)  暗室作業

暗室作業。今月頭に出掛けた京都写真。いつも使っていたコダックのフィルムが売り切れていたため代わりに買ったイルフォードのフィルムは滑らかな階調で、今回の撮影には偶然にもよく似合っていたようだ。いつも持ち歩いているブローニフィルム用の重いカメラではなく、35mmのレンジファインダーを手のひらに包みこむように持ち歩きパシャパシャとやっていたのだが、出来もそんな雰囲気が現れたいる感じで、写真はカメラが撮るものなんだなあ、と改めて思った。 
いつもより小さいキャビネサイズに焼いてセレクトした30枚弱のプリントを並べて、「京都の1日」のアルバムが出来た。 そんな風に気軽に街を歩きながら撮った写真は久しぶりのような気がする。無邪気で、すこしセンチメンタルなアルバム。何かはじめてカメラを持って街に飛び出したときの記憶が甦ってきた。



2002.07.08 (Mon)  夢

夢を見た。たまに夢の中に出てくるあの「場所」だ。
どこだろう、日本ではないな。アメリカでもない。ヨーロッパ? アントワープ? 近いかもしれないけど、やはり行ったことが無い場所だ。広場がある。道化師がいる。祭りか市場のようだ。広場からあちこちに路地が延びている。石畳が続く。空は晴れていて青空が覗いている。
外国人の少女が、少年が手になにか風船のようなものを持って走っている。家のポーチから身を乗り出した婦人が虚ろな顔で通りをぼんやりと眺めている。 僕はカメラを持っている。カメラを持ってそんな人たちを写真に写している。少女と話をしたり、少年と一緒に駆けたりしながら写真を撮っている。
僕は旅をしている。いつもこの「場所」でなくても、僕はこの「場所」の人間ではないことだけは共通している。僕はいつも何処か知らない場所を旅している存在だ。 
  少年達が、広場でボール遊びをしている。それを僕はちょっと上から俯瞰して見ている。写真を撮る。 ポーチに腰掛けた婦人に話かけ、彼女の虚ろな表情を撮る。 木によじ登った少女を下から見上げて僕は声をかける。すると、僕の横を3人の外国人の男が、立派なカメラを抱えて同じように写真を撮っていることに気付いた。彼らは全く僕に気付かないようで、そのまま話ながら通りの向こうへと消えていってしまう。
僕は別の路地に入っていく。 今度は同じ日本人のような顔をした少年が僕に英語で話しかけてきた。エイガカンハ ドコニアリマスカ?」 「この土地の者じゃないんだ。だから分からないなあ。 でもちょっと待って。何故だろう、分かる気がする。あの大通りを右に進んでいっても、左に進んでいっても、いずれ別々の映画館にぶつかるよ。問題は君が何の映画を見たいかじゃないかな。」 そういうと、少年は気まずそうな顔をして、でもお礼を僕に言って自転車に乗り去ってしまった。
 路地から路地へ。石畳を歩く。どこの路地裏にも人がたむろし、それぞれに奇妙な遊びや、見知らぬコトバで会話をしている。

「一瞬のうちに消えてしまうもの。そんな刹那を集めていけばいいんだよ。」
誰かがそう言った。僕が言った? 誰だろう?  吹きぬけた風のような刹那を、沖縄の写真から選び出そうと、朝目が覚めて僕はそう思った。



2002.07.06 (Sat)  

ようやく、沖縄の写真を全てプリントし終えた。何枚になっただろう、まだ数えていないが、結構な量になった。
既に先にプリントした数枚をCDROMにして、フランスの『CLAM』マガジンには送っている。来月にはその写真が掲載されたイシューが発売されるはずだ。 全てプリントしたといっても、ようするにベタ焼きから一旦セレクトしたものを大きくしてみた段階に過ぎない。ここからちゃんとそのプリントを見て選び直し、どんなまとめ方にするのかをじっくり考えなくてならない。そして、その上で、おそらくもう一度プリントすることになるだろう。
 まあそれに、まとめる以前に、ちゃんといい写真がそこにあるのか、なんだけれど。



2002.07.02 (Tue)  名古屋へ

日曜日、名古屋での友人の結婚式に出席した後、そのまま京都まで足を延ばした。
日曜日の夜から月曜日まで、1日だけの京都旅行。宿はインターネットで一人3000円のホテルをおさえた。ワールドカップの決勝に間に合うようにと、宿に着いてすぐに荷物を降ろし、シャワーを浴び、錦市場の方で夕飯を探しに出掛けていった。 錦市場の入り口で見つけた饂飩屋に入り、店のおばさんと掛け合い漫談のような談笑を楽しみながら、ちゃっかりおばさんの術中にはまり色々と追加メニューをとらされ、でもそんな会話も関西に戻ってくる時くらいの楽しみで、懐かしく、愉しんですっかり腹一杯になるまで頂くこととした。夕方から雨足が強くなってきた、新京極、先斗町界隈を雨の中散歩しながら、ゆっくり時間をかけてホテルまで歩いて帰った。
  TVではワールドカップ決勝のドイツ・ブラジル戦も終わり間際。その15分後にはブラジルが覇者になった。ドイツのGKカーンが後半終了の笛とともにゴールポストにもたれながら座り込みじっと前を見据えて動かない。今回のワールドカップでは、ベッカムでも中田でもなく、ポルトガル選手の悪夢に魘されながら(いや、悪魔に翻弄されながら)ピッチをかける顔と、死闘が終わった直後のアイルランド・サポーターの親父が天を見つめ国歌を歌う眼と、このカーンの決勝直後の姿とが個人的には一番印象に残った。
 あっけなく、というか、突然のようにワールドカップの熱気も冷えていくようだ。何事もなかったように、TVは次の番組を放映している。そんな風には早すぎるスピードであらゆるものが通り過ぎる中で、親しくない街で、こっそりと狭いホテルの一室に二人で過す感覚が何故か嬉しく感じた。
 すぐにTVも消し、明日のことを考えた。1日だけの旅。それは旅というようなものではない、ちょっとした散歩。いつもの重いカメラは家に置いてきた。手のひらに入る小さなカメラに数本のフィルムをポケットに詰めて、さて明日はどこを歩いてみようか。



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