ほぼ写真展の準備が完了した。
今回は、キヤノン販売株式会社さんのご好意で最新のインクジェットプリンターをお借りすることができた。 展示する作品はすべてB0以上の大判サイズでインクジェットプリントしている。手順としてはいったん僕自 身が自宅の暗室で焼いた半切サイズのプリントをドラムスキャナーで4色分解スキャニングを行い (これが実は一番大切なところで、今回は後輩のM君がこの大切な部分を引き受けてくれた) その後マッキントッシュでサイズや色目を若干修正して、プリントアウトするという段取りだ。
このインクジェットプリンターだが、仕組み自体は非常にシンプルなものの、なにせ大きく重い。 勿論、自宅などには運び込むわけにもいかず、床下に配線が敷き詰められているような最近のオフィスビル では点で荷重がかかり床が抜けてしまう。散々駆けずり回り、ようやく知人の紹介である専門学校の地下 ガレージ兼倉庫をお借りすることができた。
そこはまるで悪玉に捕らえられた者が椅子に縛り付けられて 「どこに金を隠したのか白状しろ!」なんて典型的なスパイ映画のワンシーンが似合う感じの場所で、 相棒であり作品づくりを手伝っていただいている中根さんと僕の2人は「この上の配管の中にトムクルーズが 忍び込んで這いまわってるんちゃうか」などと馬鹿なことをいいながら、偽札づくりの冴えない悪者一味のごとく、 丸々1週間この場所にこもって作業を続けてきた。
実際に出力してみると、ほぼ最初に僕自身が暗室で焼いたプリントに限りなく近い発色で、しかも インクジェット独自の最もマットな用紙を使用すると、光沢のある用紙(写真印画紙的)や実際の写真印画紙 以上に、深みと奥行き、それになんともいえない空気感すら漂いはじめ、狙い通り以上の作品に仕上げることが出来た。 デジタルをアナログに近づけたり、アナログとデジタルを分けるという意識をはじめから持って向かったり、 そんなアプローチではなく、今回は最終的に描き出したい「空気感」のために様々な手段をあわせ、 アナログもデジタルもフュージョンさせて、独自の表現スタイルを獲得することが出来たと思う。
何より実際にこの作品を見てもらえると、そのことを感じていただけるはずだ。
表参道に立ち寄る機会があれば、ぜひたくさんの人に覗いてもらいたい。
今回は、キヤノン販売株式会社さん、後輩のM君、作業場所を提供頂いた東京ネットウェイブの清水さん、 そして最初から最後まで作品づくりをサポートしてくれた友人の中根”ちーなか”大輔、そして友有子ちゃん に心から感謝します。
2001.11.05 (Mon) Almost
今年の夏頃に観た『ALMOST FAMOUS』(邦題『あの頃ペニーレインと』)という映画のサウンドトラックアルバムを毎日聴いている。
アプローチやスタイルを変えながら、この2001年においてもロックミュージックは僕を刺激し魅了しているのが事実だから、詠み人知らずの決り文句のように「70年代はロックミュージック一番輝いていた頃」とは勿論言いたくないのだけど、しかしそれでもこの頃のロックミュージックには今聴いているものとは確かに何か違うものを感じずには居られない。
それをINNOCENTやHOPEといってしまえば簡単なのだけど、やはりその通りなのだと思う。どこまでも歩いていけそうな向う見ずで強引で、でも完全に周りの人や社会から隔絶してしまうことも出来ない脆さや人の良さが見え隠れする音。
多分それは今僕等が居る世界のように、既に全てが発見されつくし、あらゆるイメージが既知のものになってしまったような時代ではないからだと思う。
僕はこの『ALMOST FAMOUS』という映画が好きで堪らない。
まるで小学生の頃に観た『銀河鉄道999』のように好きだ。
小学生の頃、作文で「僕は星野哲郎になりたい」って書いたことを思い出した。
まだまだ分からないことが多すぎるから、僕等はやっていけるんだと思う。
僕が写真を撮るのも多分そういうことだ。