6時過ぎまで暗室に入り、Elliott Smith の『Figure 8』とSmashingPumpkinsの『 Aeroplane flying high 』が何十回もリピートされつづける間に、15枚程度のプリン トを仕上げた。午前11時頃まで眠った後、改めてそのプリントを見て、気に入ったの は5枚程度だった。残りの数枚は真夜中の作業の中で緊張がやや途切れた時間帯にプ リントしたことが自分でもよく分かる甘い仕上げになっていた。それらは次回再プリ ントにすることにした。
そのプリントを眺めながら、うっすらと次のテーマのようなものが見えてきた気が した。それはまるでレントゲン写真でも見るように、この数年自分の身体の中に取込 まれ蓄積し凝固していった核のような存在を自分自身で確認したような感じだった。
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スペースシャトルが墜落したというニュースがメディアを騒がせている。と、客観的に書くのは、僕の周りではあまり誰もそのことで語ったりしていないという状況の方にどうしても個人的には実感があるためだ。何かどこかの国で少し大きめの山火事でも起こったかのようだ。このニュースに対する周りの反応が実際にどうだか知らないが、僕個人は率直に言って、どこかアメリカの掲げるフロンティアスピリットというものに嫌気がさしているからなのだと思う。勿論、開拓者魂というその言葉そのものが本来示していることに、ではない。この言葉の前に「アメリカの~」とついた段階で、そう感じてしまうということだ。
事故の直後に、深夜のラジオのディスクジョッキーがこの事件のことをこんな風に話していた。「俺は毎日このニュースばかりに噛り付いて聞いているんだ。アメリカは本当に僕らの未来のために何十年も前から挑戦してきているんだ。俺はそのことを良く知っている。この地上ではいろんな問題があるけど、宇宙では人類はみんな一つになることが出来るかもしれないんだぜ!俺はこの計画はこれからもそのためにも続けてほしいんだ!」
アメリカの西海岸でずっと暮らしてきたという所謂帰国子女のこのDJはお得意のHIPHOPをセレクトしながらそう力強くマイクに向かって叫んでいた。
しかしこの地上でまともな対話すら出来ない連中が、宇宙に行ったからといって何一つ解決することなど出来ない。この時点でこのDJは自分が全くの馬鹿だということを力強く露呈してしまっていた。
HIPHOPもそんな連中の手で流されているようじゃ、全く不本意だろうな。
フロンティアは宇宙なんかにはない。まずは目の前に、この日常にある。
そしてそのことこそをHIPHOPという音楽は伝えようとしているんじゃないのかな。
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