既に八重山では4月を待たずに海開きをしているというが、沖縄本島で春を迎えるにはあと僅かな時を待たなければならないようだ。
この数日というもの、曇りの日々が続いていた。その合間に毎日のように強い雨が降る時間帯があったが、それは熱い夏のスコールとは違い、まるで天が冬の季節の最後に残った湿った空気を絞り出しているかのようで、未練がましい冷気を地上に残した。
安座真から久高島に渡るフェリーに乗り込んだのは、そんなじめじめした曇りの空が嘘のように晴れ渡った日の朝だった。乗り合わせた船客は釣り人や地元の人達がほとんどで誰もが静かに座席に身を任せていた。小さな船は、そのまま寡黙な船客を抱えて、短距離走者のようにすぐトップスピードに加速した。高速で海面を飛んでいく船の揺れを足元から全身に響かせながら、僕は後部デッキに立って泡立つ波を見ていた。船内を覗き込むと、乗客達は聴き慣れた船のエンジン音の隙間に何か聞き耳を立てるかのように、ほんの僅かに身体を傾けている。静かに、あの強い光を連れてもうすぐ春がやって来るのだ。
2003.03.25 (Tue) Home Coming
最近はといえば、これまでの写真と新しい写真を先日「発見」したテーマに沿って再編集したり、また新しくプロデュースに携わっているTV番組の企画や撮影,編集を行ったりしていた。でも実はそういうことよりも、とにかく、英米軍のイラク攻撃のことに話は尽きてしまう。英米軍とはいえないか、日本もだし。(昨日の国会答弁での小泉首相、川口外相の答弁をみて、日本はそもそも独立した国家なのかと疑わしくなった。極東の51番目の米国州か、やっぱり。)
反戦運動は世界中で引き続き規模をましながら展開されているようだ。アカデミー賞授賞式ではマイケル・ムーアが「恥を知れ、ブッシュ」と叫んだ。(ブーイングが結構多かった会場の様子を見て、まあやっぱり米国はそんなものかと思ったが)
そのような中、で、結局「君は何するの? 何が出来るの?」と自分に問うてみる。僕は、自分自身で撮影した写真を使うことくらいしか出来ない。 ということで、先週末から急遽友人のギャラリーを借りて、写真展をゲリラ的に開始した。
タイトルは『HOME COMING』。僕はそこで自分自身の故郷の写真をセレクトして展示した。小さな小さな会場、わずか8点が限界だった。何ゆえ『HOME COMING』なのか。恥ずかしげもなくこの年で故郷の写真を人様に見せるのは何故か?それはシンプルな理由からだ。戦場の悲劇を捉えた写真によって、戦争に異議を唱える意識が芽生えることも確かにあるだろう、しかし見知らぬ土地の話を客観的に見ること以前に、まずは自分自身、僕と貴方、お互いのhomeについて話をはじめることから始めることが、一番身近な平和への道なのだ、と僕は思っているからだ。
もちろん、こんなちっぽけな写真展がどの程度のチカラがあるのかは、分からない。しかし自分自身に出来る範囲で何かアクションを起こすこと、それを信じられなかったり、何も実行できなかったら、その時点で僕はこの戦争に対して自分の意見をもっていないことと同じになると考えている。 勿論なるべく沢山の人に見てもらいたい。homeの話をいろんな人たちをしてみたい。