2025.7.30(Wed)
「ちいさな変革」
企画展『THE 9 PASSPORTS ― スモール・イノベーションの風景(Landscapes of Small Innovations)』が虎ノ門にあるギャラリー、SIGNALにてはじまりました。
本展は、数年にわたり実施してきた、国内および海外都市におけるリサーチの成果の一端を、写真、映像、グラフィックデザイン、そして今回のリサーチという旅をともにした仲間たちで綴った「旅のノート」を通してご紹介します。
今回の対象都市は、コペンハーゲン(デンマーク)、バルセロナ(スペイン)、ビルバオ(スペイン)、リンツ(オーストリア)、ソウル(韓国)、鶴岡(山形県)、南砺(富山県)、西粟倉(岡山県)、虎ノ門(東京都)です。
これらの都市の多くは、例えば、「世界競争力ランキング」「アートが息づく創造都市」「デジタルシティの最前線」「奇跡の村」などの言葉とともに紹介されることもありますが、実際に現地を訪れ、行政、企業、教育機関、アーティスト、起業家、そしてそこに暮らす人々と対話を重ねるなかで気づかされるのは、そうした光のあたる華やかな側面の裏に、日々の実践の積み重ねが育て上げた確かな現実と確かな現実と、それを支える仕組み、そして多様な営みを結びつけ励ます人々の存在があることに気づかされます。
「都市」や「社会」は、トップダウンによる大きな改革や技術的ブレイクスルーだけで変わるものではありません。そこに暮らすさまざまな人々が、足元にある文化的な土壌(文化的アイデンティティ)を見つめ直し、自らの手で変化を編み出していくプロセスによって育て合うものだと思います。
本展のタイトルにも掲げた「スモール・イノベーション」とは、単に規模が「小さい」ことを指すのではなく、生活に根ざした実践が生み出す手触りのある変革──そして、住民自らがつくり、受け継ぎ、更新することで立ち上がってくる新たな社会の風景を意味します。
現代社会において、大規模な変革はときに人々を疎外し、無力感をもたらすことがあります。
だからこそ今、問われているのは、変化の主体としての「わたし」、そして「わたしたち」のあり方であり、「ともに育てる」プロセスをどのように実現していくかという視点です。
スモール・イノベーションの連なりこそが、私たちの未来をかたちづくっていく。それは、ひとりひとりが「変化の主体になる(Be the Change)」という自由を手放さずに生きていくことを意味しています。
現代的な意味における「社会(society)」概念が、都市化や産業化を含む近代化の流れの中で形成されたように、「社会(society)」とは、所与のものではなく、他者とともに暮らし、対話し、関係を結ぶなかで、つねに生まれ続ける“生きた場”です。そして、この変化し続ける現実を受けとめるために、私たち自身もまた、固定された視点にとどまるのではなく、つねに更新される場に身を置き、対話し、想像し、言葉を探し続けることが求められています。
旅をするように、土地の風土や歴史に触れ、人と人とのあいだに身体を置いてみること。
そこから問いを抱き、新たな言葉を見つけていくこと。それが、社会を見つめるための確かな方法であり、変化をともにつくり出すための出発点なのです。
会期中は、各都市をテーマにした連続イベントを開催し、多彩なゲストとともに、私たちが暮らす日々とまちについて語り合うオープン・ダイアローグを展開します。
ぜひご参加ください。



(設営中、深夜3時。2025年7月28日)
企画展『THE 9 PASSPORTS ― スモール・イノベーションの風景』
place: SIGNAL
date: 2025年7月29日(火)~8月30日(土) ※日・月・祝日は休み
入場料:無料
監修:鷲尾和彦/リサーチ:久々江美都、幸田真里奈、齊藤あかり、佐藤克志、清家高人、寺前慎太郎、戸澤和、牧之段直地、三田哲矢、山縣太希、鷲尾和彦/写真撮影・映像制作:鷲尾和彦/デザイン:齊藤あかり、西浦晃史、西島希世/広報・制作・プロデュース:ヴィンセントー朔・亀山淳史郎・小林穂乃香・齋藤由希子・菅井朋香・塚越奈央・松野千広・米澤美来