2008.03.23 (Sun)  ある一曲が

来週の韓国行きにむけて、スライドショーを作成。「iMovie」を初めて使ったけど、12分間のスライドショーはさくさくと出来てしまった。(といっても、気がついたら8時間ほどかかっていたのだけど。)Youtubeにあげようか、なんてことは考えない。見てもらう人、場所、空間、時間を考えてつくっているし、つまりはライブなものなのだから。
iTunesで音楽を聴きながら作業していたのだけど、ある1曲だけが他の楽曲に比べてダントツに再生回数が多いことに気づいた。WILCOの『On And On And On』。真夜中の西表島のビーチで、沖縄本島を走る車の中で、いつもの電車の中で、仕事をしながら。どこでもこの曲ばかりをひたすらリピートして聴き続けている。あまりにも今の心情にぴったりすぎて怖い。そして怖いくらいに美しいメロディと歌詞。

This world of words and meanings makes you feel outside
Something that you feel already deep inside
You've denied
Go ahead and cry



2008.03.21 (Fri)  アーティスト

佐野元春さんの埼玉川口でのライブに。佐野さんの存在がどんどん音楽そのものに、ロックミュージックそのものになっていく。それは本当に凄いこと。丁寧に、質を追求し続けることの真価は積み重なって行く長い年月が自然に証明してしまう。力強さを取り戻した声。すばらしいバンド。3時間にも及ぶ長い演奏。路上にころがった小さな欠片を掬い上げるような佐野さんの歌や詩はどこか写真にも似ている。それは、他者や自分、そして世界に対する想像力を、そして友愛を広げようとするコトバ、メロディ、リズム。懐かしさに浸るのではない(少なくとも昨日の僕にはそんな感覚など微塵もなかった)。その路上の欠片がリアルである(あった)かぎり、それは時を超えて、いつでも今として響くと思う。「永遠の現在」。
そのことに、そしてそれを実現してしまった表現者の姿に、強く撃たれた。涙がとまらなかった。
ライブの最中、暗闇の中で手帳に書きとめた言葉を見返す。

「変わらない、変わるはずないさ」。

「よく来てくれたね」と、楽屋でお会いした佐野さんは、いつものようにこんな僕に対してもとても丁寧に優しく招いてくださった。僕は必ずその日のライブの感想をお伝えするようにしているのだけど、そんな僕の言葉にもきちんと耳を傾けて頂ける。僕は本当にたくさんのことを佐野さんから教えてもらっている。心から感謝しています。ありがとうございます。



2008.03.19 (Wed)  韓国でスライドショー

来週、韓国行きます。韓国のギャラリーで日本人写真家5人でスライドショー。岡田敦さん、石川直樹さん、澁谷征司さん、浅田政志さん。そして僕。 
二度目の韓国。前に一人旅で北から南まで回った時の「静かな衝撃」は、かって他のどの国を旅したときとは全く異質なものだった。奇妙に捩れた日常。現実と夢が微妙に絡まりあいまとわりついたあの感覚は肌に染み込んでしまっていまだに消えない。撮りたい場所があるので(撮らせてもらえるかどうか分からないけど)、ギャラリーに行く合間はそこに入り浸りになるのだろうな。



2008.03.14 (Fri)  西表島

沖縄、西表島。数日間ろくに寝ていなかったためか、一足先に島を出たスタッフを見送った後、一人で民宿で倒れるように眠りこんでしまった。夕方前に目を覚ますと、空が真っ赤に焼けていた。「どうしてここにいるのか、ここはどこなのか、僕は何をしているのか」 しばらく全く分からなくなってしまった。まるで世界の終わりのような風景。でも終わりは始まりなのだ、と朦朧となった意識の中で、一人で笑い転げた。


(Iriomote, Okinawa. 2008.03.06.)



2008.03.03 (Mon)  追伸

前回の日記、のようなことを書いておきながら。

例え多くの共感者が居たとしても。
もしも、たった一人だけ自分にとって大切なその人に、コトバも写真も、一切が届かなかったとしたら。

その時、全てがバラバラに、木っ端微塵になってしまうだろうか。
その時、「Neighborhood」だろうが、なんだろうが、大仰な言い回しは、自分を維持するための言い訳でしかないと気づいてしまうだろうか。
その時、長い時間をかけて費やしたコトバは、単なる道化の戯言だと気づくのだろうか。
その時、写真よりも大切なものがあると気づくのだろうか。
その時、それでも写真を続けているのだろうか。

心はいつも彷徨し続けている。
いつも、どこにいても、「ここではないどこか」のことばかり、考えている。
いつも、どこにいても、居心地の悪さばかりを感じている。
ただただ、好きなように生きて、撮って、驚きながら、奇声を上げながら、写真を撮っていれればいいと思っているだけ。
ただただ、美しい世界と出会いたいと思っているだけ。
ただただ、目の前の光景を愛おしく感じたいだけ。
僕がしていることは、ただただ、とても単純なことでしかない。

言語化して誰かに伝えることは、本当はどうでもいいこと。
コトバが邪魔をする。コトバが距離を遠くしてしまう。コトバなど、本当は必要ない。

多くの人に届くことよりも、たった一人でも、大切な人に届けば良いと思う。
そのことに気づいていながら。
それでも、写真は続けていくと思う。コトバをしたためるのだと思う。
笑いながら、泣きながら。




2008.03.02 (Sun)  懐かしい未来

大阪での「Neighborhood」展が終了してから数週間、芳名帳に残して頂いたメッセージを読み返しながら、作品そしてあの空間を体験した人たちの中に現れた風景を想像してみる。
「Neighborhood」はひとつの写真シリーズや写真展のタイトルに留まるようなものではなく、僕がおそらく今後長い時間をかけて取り組んでいくとても大きなテーマになるだろうと、今回の写真展を機会に自分自身で気づいた。撮影する対象は限定されない、Neighborhoodとして世界を捉えること。それが僕の写真だし、つまりは僕と世界との関わり方なのだと思う。これまでもそのことを無意識的に撮影行為を通して感じていたが、単に言語化できていなかった。これまでの僕の写真シリーズ、『インディアンサマー』『アクロス』『極東ホテル』、これらは結局は「Neighborhood」の一部だし、今撮影しているポートレートの新しいシリーズも同様だ。言葉というものはそんな風にある日突然空から降ってくる。そして降らせるのもいわば自分なのだろう。
その意味で、今回の大阪での写真展は「結果」ではなく、新しい「始まり」になったような気がしている。
未来への入り口はどこか知らない異国ではなく、今、ここ、目の前の親しい場所に用意されている。親しいもののなかからこそ、新しい未来は立ち現れてくる。蓄積してきた時間、身体の中に記憶されたものの中からしか未来は、希望は生まれない。親しい未来、懐かしい未来。それが「Neighborhood」という場所なのだと思う。そして写真は過去を写すものでありながら、同時に未来をも写すことが出来る。
詩人のGary Snyderは『Poetices Of Place』と言った。「Neighborhood」はユニバーサルな感覚なのだと思う。



2008.03.01 (Sat)  狛猫(こまねこ)


(Kyoto, 2008.02.28.)



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