2007.03.31 (Sat)  Bruce Weber 『HEEL TO HEAL』

ブルース・ウェーバーの写真集『HEEL TO HEAL』を購入。写真集といっても、これはBW自身がコレクションしてきたという「動物と人」の写真やペインティング作品で構成されているものだ。(最後の方にはBW自身の犬の写真も数点入っている)
しかし、この作品集に収められている作品の多くは、BW自身が買い集めた著名な作品よりも、友人から送られたもの、フリーマーケットで見つけたという無名の写真家や画家の作品の方が沢山収められている。でもその1点1点がとても素晴らしい。BW自身がどんな人なのか、何を大切にしているのかということもとてもよくわかる。そしてこの1冊の本は、愛しいもの、大切にしているものを多くの人とシェアするためにつくられている。
中でもやはり僕が一番気になったのは、この本の最初のページに収められている写真だった。DannyLyonの「For Walker Evans and James Agee, Knoxville,Tennessee.1967」。20代の初期、僕が最初に惹かれた写真。そして今でも最も好きな作品

写真は何故か常に「痛々しさ」の方が注目されるきらいがあるように思う。そちらの方が視覚的な印象の強さや鑑賞者の日常からの「遠さ」故に注目を集めがちだ。不幸よりも、ささやかな幸運な物語を描く小説の方がどれほど難しいものか。淡々と日々の中から小さな幸福の欠片を拾い続けていくように写真を撮るということは、とてもささやかなで行為かもしれない。でもそれ故に、写真家として、あるいは1人の人間としての力量が問われるような気がする。

BWといえば華やかなファッション写真を思い起こす人も多いかもしれないけれど、この作品集には彼の写真家としての姿がとてもよく現われているように思う。そしてそんな1冊に出会うことが出来て幸運だと思った。多分これからずっと何度も見返す一冊になるだろうなと思う。



2007.03.18 (Sun)  山歩き

最近うちの直ぐ近くの山に古墳があることを知ったことを機に、週に一度は軽いトレッキング(山歩き)をしている。高低差があるということはその都度視点が変わるということ。身近な山に登るだけでも毎回新しい視点の獲得に繫がり、これは病みつきになりそうだ。
今月末にはパタゴニアが主催するトレッキング企画に参加する予定。「弁当・飲み物・雨具持参」と説明書に書いてあって、ますますワクワクするぞ。
秘境の旅もいいけれど、まずは裏山の再発見。そこから始めないと。
ということで今日の1枚。
カメラはプラウベルマキナ、80mm。沖縄通いの時以来久々に使ったが、軽くてトレッキングにはぴったりだった。今年はこのカメラ、活躍しそうだな。




2007.03.07 (Wed)  男2人組

たまには音楽の話を。

WilcoのJohn StirrattとPat Sansoneの2人組、The Autumn Defenseの新譜『The Autumn Defense』。
とてもいいです。久々にはまりそうな感じです。
去年の夏ごろから半年以上、Kings of Convenience とMassive Attackを交互に繰り返す日々が続いていて、好きだから飽きないんだけど正直参ったなって思っていたところ、思いがけずのヒットでした。
一緒に買ったのが、airの新譜。そしてこれも良かったです。
それにしても、どれも男2人組ばかりのグループ(ユニット)ですね。
鳴らしている音こそ違えど、緊張感のあるとても繊細な音作り、そんなところも共通しているように感じます。
去年オーストリアに行くときのルフトハンザの機内で見た「Kinky Boots」って映画の中で、主人公のドラッグクイーンの男(もとボクサーでむっちゃマッチョ)が、「実は女はマッチョな男は好きじゃない。繊細で優しい、そんな女性的な男にこそ惚れるものよ」という台詞を言っていました。The Autumn Defenseを聴いて、あるいはkings Of Convenienceを聴いて、ふとそんな台詞を思い出しました。



2007.03.03 (Sat)  Crossing

「これ、いつの写真?フランスでは今年は1日しか雪が降らなかったのよ。」
粉雪が舞うフォンテーヌブローの写真を見せると、リヨンから来たアンニャはそういってちょっと驚いたような顔をした。
「もう随分昔のことのように見えるわね。」
僕らの会話を聞きながら、隣ではナイジェリアから来たビクトールが、モバイルPCでロンドンの友人とチャットをしている。
「今、自分がどこにいるのか、さっぱり分からないよ。俺、今はトウキョーに居るんだよな。」
東京の下町、小さな簡易宿のロビーの昼下がり。尽きることなさそうな雑談が続く。
「そろそろ行くよ(I'm leaving now)。君たちもどうか良い旅を(Have a nice trip)」。
そうして、また束の間の出会いと別れを繰り返す。
僕は東京駅に向った。

ちょうど2年前の今日、僕はフランスのフォンテーヌブローにいた。
前日から振り続けた大雪のために、ロンドンからの列車は何時間も雪が舞うフランスの田園地帯の中にスタックしてしまい、フォンテーヌブローに着いたのは、その小さな町の僅かな数商店がシャッターを下ろそうとする時間になってしまった。
夜、小さな中華料理店で周りの人々の会話に耳を傾けながら1人だけの夕食を済まし、その後、雪の中をちょっと滑りそうになりながら1時間ほど散歩した。
夜になっても雪は振り続けていた。街灯に照らし出され、きらきらと光かりながら踊るように降る雪の写真を僕は何枚も撮影した。

翌日、その人は僕の泊まるホテルまでわざわざ迎えに来てくれた。
「こんなに雪が降るなんて、この町では本当に珍しいんだよ。」
それが挨拶代わりの言葉だったと思う。
そしてその後、行きつけのカフェで、彼の仕事について、今住んでいるこの町のこと、そして日本という国のことなど、いろいろな話を聞かせてもらった。
丁寧に一言一言、言葉を選びながら話すその姿が今でもずっと忘れられない。
別れ際、僕は彼のポートレートを何枚か撮った。雪はまだ降っていて、少し曇った彼の眼鏡にもいくつもの濡れた跡を残していた。
通りの向こう側に歩いていく彼の後姿を見送った後、すっかり雪に埋もれてしまった町並みの写真を僕は1人で撮り続けた。

この町に住むっていうことはどういうことなんだろう。
どうして人は旅を続けるのだろう。
雪の中写真を撮りながら、そんなことをずっと考えていたことを覚えている。

あの日からちょうど2年後の今日発売されたこの本を、春のような日差しが差し込む暖かな列車の車内に座って読んでいる。この本の中でまるで映画のエンドロールのように使われているあの時の写真を見返しながら、僕は僕自身の次の目的地のことを考える。間もなくこの列車は海沿いの小さな町に着く。
終わりは、はじまり。




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