1999.12.05 (Sun)  鳶色トニーと、99年最後のインディアンの夏

元気ですか。 昨日、今年最後の「INDIAN SUMMER」でした。
去年から引き続き、今年も夏が終わるのを待って、出来る限り時間をつくって 茅ヶ崎以西、主に平塚へBIKEで出掛けては写真を撮ってきたんだけど、
来週一足早いお年玉を実家の姪に上げるために帰省するのと、 再来週以降、年明けまでNY(僕が最も好きな写真家Danny Lyon氏に遂に遭うぞ!)と パリで君に会うために、今週でBIKEに乗って出掛けるのは最後になってしまいました。

昨日もいつものように、カメラ1台をリュックに入れて、出掛けたんだけど、 着いて早々、いきなり1本目の途中でカメラの巻き上げ部分が壊れちゃって、 その後1枚も巻き上げられなくなってしまいました。 しょうがなく近所のCVSで「写るんです」買って撮ろうとすると、 何故か平塚の防波堤に人なつっこそうな感じのアジア人が居て、写真を撮る僕をニコニコしながら見ているわけ。 まああまりにも僕を見てニコニコしてるから、つられてニコニコしながら話ししてると、 彼はスリランカから出稼ぎに日本に来たってことを話し始めたんだ。名前はアンソニー。「Call Me TONY」って。 彼は、眼も、顔も、髪も、全部綺麗な「鳶色」。 つまり顔がブラウンのグラデーションで出来ていてとてもいい顔つきをしていた。
「日本に来て”ゲンバ(現場)”で仕事してたんだけど、仕事なくなちゃった。 すること無いから毎日BEACHに来てる。君は今日、明日することあるの?」って言って 無茶苦茶寂しそうな顔をするんだ。そんでもって僕も「写真撮ってる」っていっても、なにせ 「写るんです」だから、説得力なくって、 「別に、まあこの場所は俺が一番好きなBEACHなわけ、だからBIKE乗って来てるんよ。 ほらこのカメラそこで買ったから一緒に撮ろうぜ。」って、買ったばかりの「写るんです」でお互いをパシャ、パシャ、カシーッ。 「お、いいね。」なんてポーズお互い撮ったりして写真を撮って遊んだんだ。
そんなことを していると、今度は痩せて目やにだらけの野良猫達が混じってきて、一緒に僕とトニーの遊びに参加しだした。 すると、次ぎから次ぎへと、出て来る出てくる。全部で12匹。みんな子猫。 最初は警戒してたんだけど、1匹が一緒に遊んでいるのを見て「大丈夫かも」なんて思ったのか、どんどん 出てくるわけだ。 連中、出てきたのはいいけど、海の風が冷たいもんだから、みんなして僕らのひざの上に 乗ってくるし、腹減ったニャーっていうもんだから(そういうんだよ、ほんとに。)、 「しょうがニャいニャー」、ってローソンまで走って鮭缶買いにいって、 僕とTONYは、鮭缶くってる猫達見ながら、一緒に餡饅(TONYは鶏肉以外は肉食えないので、 餡饅)食ったりして。
なんか、もうその辺になったら、「ニャーニャー」と うるさい猫どもに囲まれながらお互いの「国」の話しをすることに熱中していまい、写真なんか忘れてしまってね。

それにしても、あれだね。 なんで、みんなして同じラブラドールばっかり飼ってんのかね。 平塚のビーチに集まる奥様方のルールなのかね、あれは。妙な光景だよ。全部同じ犬連れてるのって。 おまけにみんな英語の名前つけちゃったりして。 「ALEX!」とか「JIMMY!」とかさ。 トニーは、「ALEXって王様の名前なんだぜ!奥さん!」って僕にこっそり耳打ちして、そんな奥様達を見ていたんだ。 それにしても まあ、出て来る出てくる、ラブラドール群れ。 もしかして奥様たち、ちょっと前はシバリアンハスキー、そのもっと前はチワワやスピッツなんかお買いあそばしていらっしゃったのざますか? しかも綱はなしてるもんだから、こっちのあんまんと猫に飛びついてくるんだよな。

(ちなみに、シベリアンハスキーってどこに行ってしまったんだろう?って思っていると、この前高円寺の豆腐屋の店先に薄汚れたなりで繋がれているのを見たよ。田園調布や駒沢あたりで捨てられて高円寺の豆腐屋の優しい親父に拾われたんだろうね。ハスキーはそんなに頭が良くないらしく成長した後では人にもなつかないらしいんだよ。だから捨てられた連中は野犬化して結局保健所で処分されたりしているらしい。酷い話だなほんとに。)

すると、僕の膝の上の猫が、お上品なALEXちゃんの綱に反応して飛びついたんだ。野良猫の方がよっぽど度胸もあるし、胸張っている。
今度は「あら嫌だ、野良猫よ。」って奥様自ら野良猫を「シッ、シッ」なんて足で「あっち行け」するのね、 でも野良猫ちゃんはそんなことで、ひよったりしないもんだから、奥様、バツ悪くなって 「あら嫌だ、この野良猫、人間見ても逃げないわよ、憎ったらしわね。」って。 するとトニーが「貴方が怖いんじゃないんですか? 逆に。」ってかました。面白かったね、その奥さんの顔は。 そんなことをしてるうちに、 すっかり陽も西湘バイパスの向こうに沈み出す時間になってしまった。 僕も凍える前にバイクに乗って帰ろうと思い、トニーに お別れをいった。
多分、彼は今日も、もしかして明日も自転車に乗ってあのビーチに行ってるんだろうな。 名残惜しそうに、寂しそうにしてた彼の表情を見たけど、彼はとてもチャーミングだし いい奴だから、また僕のような奴が明日も現れて一緒に猫を膝の上に乗っけて 話しすることwになるんじゃないかなと思う。 たぶん、きっとそうだと思うよ。 そんな風に「INDIAN SUMMER99」が終ったんだ。君はどうですか、最近。 では。また。

PS. その後、新宿のペンタックスまで、カメラ修理に行ったら、 「おかしいですね、何も問題無いですよ。」とスタッフのおじさん。 受け取ると、さっきはうんともすんともいわなかった巻き上げ レバーが不思議にくるくると調子よくなってました。不思議だね。 あの猫たちがメシ欲しさに、いたずらしたのかもね。トニーが仕込んだのかな。いずれにしても僕の中にはあの鳶色のトニーの顔がいつまでも残っているし、嬉しかった。カメラが壊れていても十分写真は撮れるんだな。



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